環境放射線に関する用語集

用語一覧

環境放射能と放射線に関する基礎的な用語について説明しています。

ア行

同位体または同位元素ともいわれます。同じ元素(原子番号が等しい)で質量数が異なる核種をお互いにアイソトープといいます。放射性のアイソトープをラジオアイソトープといいます。例えば、セシウム-134とセシウム-137はセシウムのラジオアイソトープです。

原子核から放出される粒子の放射線で、その実体はエネルギーをもったヘリウム(He-4)の原子核です。α線のエネルギーは核種によって定まっており、4~8MeVの範囲です。α線のエネルギーは物質中で吸収されやすいので、飛程(放射線の到達できる距離)は極めて短く、5MeVのα線の空気中における飛程は3.8cm程度です。

α線のスペクトルを測定する技術およびスペクトルを解析して放射能を決定する方法です。現在では、シリコン半導体検出器が主に用いられており、環境試料中のほとんどのα線放出核種はこの方法によって測定されています。

シリコン半導体検出器
シリコン半導体検出器

α線スペクトル
α線スペクトル

1955年の国連勧告により発足した国連放射線影響科学委員会(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)のことです。

イオン交換基をもつ不溶性の合成樹脂を用いた化学分離方法です。試料溶液の化学的性質により、その溶液中の金属イオンがイオン交換樹脂に強く付いたり、離れたりする性質を利用しています。

イオン交換樹脂法
イオン交換樹脂法

本ウェブサイトでは、雨や雪などの降水、さらに一緒に降下して来る微粒子などを含めたものです。この試料の放射能を測定することにより、上空から降下して来る放射能の降下量を調べます。

宇宙から飛来する一次宇宙線は、主に非常にエネルギーの高い陽子です。この一次宇宙線が大気中の窒素原子などに衝突して、いろいろな種類の二次宇宙線(電子、γ線、X線、中間子、中性子など)を発生させます。

鉱石や土壌に含まれている天然の放射性核種で、代表的なものとしてウラン-238(半減期45億年)およびウラン-235(半減期7億年)などがあります。ウラン-238はα線を放出して壊変し、さらにその核種は壊変し、というように次々と他の放射性核種を生み出します。これらをウラン系列の核種といいます。なお、ウラン-235はウラン-238の0.7%しか含まれていませんが、中性子によって核分裂をする核種として重要です。

トルエンやキシレンに有機の蛍光体を溶解した液体のシンチレータです。測定試料が水の場合には、界面活性剤を加えた乳化シンチレータが使われ、水を40~50%溶解(ゲル状)することができます。

NaI(Tl)シンチレーション検出器を用いる据置き型のγ線測定装置です。放射線施設内や一般環境中のγ線を測定し、計数率だけでなく線量率の表示もできます。

NaI(Tl)シンチレーション検出器を用いる携帯型の放射線測定器です。主に現場におけるγ線の測定に用いられ、計数率だけでなく線量率の表示もできます。

NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータ
NaI(Tl)シンチレーション式
サーベイメータ

NaI(Tl)は無機結晶の蛍光体(シンチレータ)です。γ線に対して検出感度が高く、エネルギーの測定もできますが、エネルギー分解能はあまりよくありません。

放射線のエネルギーはエレクトロンボルト(eV)を単位として表されます。これは、電子が1ボルトの電位差で加速されて得るエネルギーとして定義されますが、α線、β線、X線、γ線、中性子線など全ての放射線のエネルギーも同様にeVの単位で表されます。普通、その千倍のkeVまたは百万倍のMeVの単位を用います。

α線やγ線のエネルギーを測定する際、その精度の指標となるもので、ピークの広がりを%またはkeVで表します。NaI(Tl)シンチレーション検出器では5%から15%程度であまり良くありませんが、ゲルマニウム半導体検出器では1%以下の優れたエネルギー分解能をもっています。

カ行

河川などによって運ばれ、海底に堆積している泥や砂などです。この試料の放射能を測定することにより、海底に蓄積した放射能の分布状況などを調べます。

放射性物質や放射線源が人体の外部にあり、体外から被ばくする場合を外部被ばくといい、反対に放射性物質が身体の内部にあり、体内から被ばくする場合を内部被ばくといいます。
外部被ばくは宇宙線などの自然放射線によるもので、内部被ばくは放射性物質を含む空気、水、食物などを摂取することにより、放射性物質が体内に取り込まれることによって起きます。内部被ばくのほとんどは、自然起源の放射性物質によるものです。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

外部被ばく・内部被ばく

外部被ばく低減三原則は、以下の3つです。
■距離(distance)
放射線源と作業者との距離を離すことにより、作業時における空間放射線量率を低減
■遮へい(shield)
放射線源と作業者の中間に遮へい物を設置することにより、被ばく線量を低減
■時間(time)
作業者が放射線にさらされている時間を短縮することにより、被ばく線量を低減
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)※画像は環境省HPから引用

外部被ばく低減三原則

原子核の種類という意味です。全ての核種は原子番号と質量数によって決まるので、核種の記号は元素記号と質量数で表されます。例えば、原子番号が55の元素はセシウムで、質量数が137の原子核はセシウム-137または137Csと表されます。

ウラン-235やプルトニウム-239は中性子を吸収すると、2個の他の原子核に分裂して、およそ210MeVのエネルギーが解放されます。核分裂によって作られる核種は核分裂生成物あるいは核分裂片ともいわれます。

核分裂によって作られる核種(核分裂片ともいう)で、その多くはβ線やγ線を放出する放射性核種です。

陰ぜんとは家族を離れ、旅に出た人の無事を祈るため、あたかも当人が家に居るかのように家族と同じ食べものを一人分余計に作って供えたという習慣です。このように一人分の飲食物を余計に作ってもらい、集める方法を陰ぜん方式といいます。日常食の試料採取法の一つです。 (参考:放射能測定法シリーズ16 環境試料採取法)

土壌などに含まれているカリウムの同位体で、天然のカリウムの中に0.0117%の割合で含まれています。半減期は13億年でβ線とγ線を放出するので、γ線の測定などにおいてはバックグラウンド計数の原因の一つになります。

原子核から放出される電磁波(電波、光、X線と同じ種類)の一種で、γ線のエネルギーは核種によって定まった一定の値です。ゲルマニウム半導体検出器を用いるγ線スペクトロメトリーでエネルギーを正確に測定することによって、核種を決定することができます。例えば、セシウム-137から放出されるγ線のエネルギーは662keV、コバルト-60のγ線は1173keVと1332keVです。

γ線のスペクトルを測定する技術およびスペクトルを解析して放射能を決定する方法です。現在では、ゲルマニウム半導体検出器が主に用いられており、環境試料中のほとんどのγ線放出核種はこの方法によって測定されています。

物質による光の吸収を利用した化学分析法です。溶液中を光が透過する時に、その吸収の程度と溶液中の物質濃度との間に法則性があるので、物質濃度を知ることができます。

放射線が物質を通過する時、常に放射線の持つエネルギーの全てが物質に与えられるわけではなく、エネルギーの一部が物質に吸収されます。
エネルギーの与え方は、放射線の種類により異なります。吸収線量とは、単位質量(kg)の物質に吸収された放射線のエネルギー(J)を表す量で、単位はJ/kgです。一般的な単位としてグレイ(Gy)が用いられ、1Gyは1J/kgとなります。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

吸収線量

キレート結合によって特定のイオンを強く吸着する樹脂(選択性が高い)を利用した化学分離法です。キレートとはギリシア語でカニのはさみの意味です。

SPEEDI(スピーディ)といい、原子力発電所等の原子力施設において大量の放射性物質が放出されたり、そのおそれがあるというような緊急事態に、周辺環境における放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などを迅速に予測し、避難対策の策定と実施に役立つ情報を提供するシステムのことです。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

放射性物質もしくは放射線の異常な放出またはそのおそれがある場合に実施する環境放射線モニタリングのことをいいます。
(参考:原子力災害対策指針)

原子力施設内や一般環境における周辺空間のγ線による線量で、放射線モニタリングの測定項目の一つです。主に地面や建造物に含まれる天然放射性核種からのγ線(宇宙線も含む)に起因する線量です。放射線によって空気中で生じる電荷をもとにする線量が照射線量(単位はμR/hなど)、空気中で吸収されるエネルギーをもとにする線量が空気吸収線量(単位はnGy/hなど)といわれます。計数率から線量率へ換算することもできます。

経口摂取とは、放射性物質が含まれる水や穀物、肉、牛乳などの食物を摂取することにより、その放射性物質が体内に取り込まれることをいいます。
吸入摂取とは、空気中に含まれているガス状の放射性物質、あるいは粒子状の放射性物質(微細な粒子に放射性物質が吸着したもので放射性ダストまたは放射性エアロゾルともいいます)を呼吸により、肺に取り込むことをいいます。
排泄や呼吸により、放射性物質は体外に排出されますが、体内に残るものもあります。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

経口摂取、吸入摂取

測定値である計数率から放射能を決定するために用いる換算定数で、測定の対象となる放射線が計数される確率を意味します。スペクトル測定の場合は、ピークの正味計数率に対する計数効率(ピーク効率)を用います。

検出された放射線の数を計数するタイプの測定器では、計数値を測定時間で除した計数率で表します。慣用的に、cps(count per second)やcpm(count per minute)などの単位が使われます。

液体窒素温度(-196℃)に冷却された高純度のゲルマニウム結晶が放射線のエネルギーを電気信号に変換するセンサーとして動作します。エネルギー分解能が非常に優れているため、マルチチャネル波高分析器と組み合わせて環境試料などのγ線スペクトルの測定に広く使われています。検出器の部分は、バックグラウンドを減らすため10cm以上の厚い鉛で遮へいされています。

セイコー・イージーアンドジー社製
セイコー・イージーアンドジー社製

ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ社製
ミリオンテクノロジーズ・
キャンベラ社製

原子核に含まれる陽子の数に等しく、元素の種類は原子番号(記号:Z)で決まります。例えば、Z=1は水素(H)、Z=6は炭素(C)です。

原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)第6条の2第1項に基づき、原子力事業者、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関その他の者が原子力災害対策を円滑に実施するために定めた指針のことです。
目的は、国民の生命及び身体の安全を確保することが最も重要であるという観点から、緊急事態における原子力施設周辺の住民等に対する放射線の影響を最小限に抑える防護措置を確実なものとすることにあります。
(参考:原子力災害対策指針の前文<目的・趣旨>)

駆動機関に原子炉を用いた船のことをいいます。
原子動力は、少ない燃料で大出力と長い航続距離が得られ、しかも核燃料の燃焼に酸素を必要としないという利点を有しています。そのため、現存する原子力船舶の多くが潜水艦です。
民生用として、ロシアでは砕氷船「レーニン」号はじめ多くの原子力砕氷船を有しています。そのほかアメリカの貨客船「サバンナ」号、ドイツの鉱石運搬船「オットーハーン」号、そして日本の原子力実験船「むつ」が1960年代に相次いで建造されましたが(「むつ」が実験航海したのは1991年)いずれも退役し、輸送船としての経済的なメリットは当面ほとんどなく、現在ではロシアの砕氷船が数隻運航されているだけです。
(参考:ATOMICA)

校正(calibration)とは、JIS Z 8103:2000によると、「計器または測定系の示す値、若しくは実量器または標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業。備考:校正には、計器を調整して誤差を修正することは含まない。」と定義されています。

安定な原子核であるコバルト-59が原子炉の中で中性子を吸収すると、中性子捕獲反応といわれる原子核反応によってコバルト-60になります。コバルト-60は半減期が5.3年でβ線を放出して壊変し、その際に1173keVおよび1332keVの2本のγ線を放出します。原子力施設のモニタリングとして重要な核種です。現在、環境中にはほとんどありません。

サ行

携帯型の小型放射線測定器のことです。測定する放射線の種類(α線、β線、γ線など)により、電離箱サーベイメータ、GM計数管サーベイメータ、NaI(Tl)シンチレーションサーベイメータなどの種類があります。γ線用には、計数率だけでなく線量率の表示ができるものがあります。

電離箱式
電離箱式

GM計数管式
GM計数管式

NaI(Tl)シンチレーション式
NaI(Tl)シンチレーション式

Zns(Ag)シンチレーション式
Zns(Ag)シンチレーション式

主として土壌中に存在する天然の放射性核種(カリウム-40、ウラン系列核種、トリウム系列核種)などからの放射線、宇宙線および宇宙線が大気の原子と衝突してできる核種からの放射線があります。

原子核に含まれる陽子の数(Z)と中性子の数(N)の和(A=Z+N)のことです。

物質をイオン化し、電場磁場との相互作用を利用して原子や分子の質量の違いによって分析する方法をいいます。 (参考:日本大百科全書)

質量分析
質量分析

放射線の種類と性質、人体の組織や臓器の種類によって人体が放射線を受けたときの影響は異なります。これらを考慮して算出する放射線量を実効線量といいます。実効線量は、放射線の被ばく管理に用いられます。
つまり、組織や臓器ごとに、(吸収線量×放射線荷重係数×組織荷重係数)を計算し、全身について合計した線量が実効線量となります。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

実効線量

体内に摂取された放射性物質から、組織や臓器の受ける線量を算出することは容易ではありません。なぜなら体内の組織や臓器に沈着している放射性物質の量を測定する必要があり、しかも、その量の時間的変化を追跡しなければならないからです。
そこで、摂取した放射性物質の量と組織や臓器が受ける線量の大きさとの関係をあらかじめ求めておくことにより、放射性物質の量に対応した被ばく線量を計算することができます。このときの摂取した放射性物質の量と被ばく線量の関係を表す係数を実効線量係数といいます。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

実効線量係数

高純度のシリコン結晶は放射線のエネルギーを電気信号に変換するセンサーとして動作します。エネルギー分解能がよく、α線のスペクトル測定に使われますが、β線や低エネルギーのX線の測定にも使うことがあります。

シリコン半導体検出器
シリコン半導体検出器

生活する空間において受ける放射線の量を減らすために、放射性物質を取り除いたり、土で覆ったりすることです。
■取り除く(除去)
放射性物質が付着した表土の削り取り、枝葉や落ち葉の除去、建物表面の洗浄等により、放射性物質を生活圏から取り除きます。
■さえぎる(遮蔽)
放射性物質を土やコンクリートなどで覆うことで放射線を遮ることができるので、結果として空間放射線量や被ばく線量を下げることができます。
■遠ざける
放射線の強さは、放射性物質から離れるほど弱くなります。このため、放射性物質を人から遠ざければ人への被ばく線量を下げることができます。また、放射性物質のそばにいる時間を短くすることも「遠ざける」ことになります。
(参考:環境省除染情報サイト)※画像は環境省除染情報サイトから引用

除染

蛍光体(シンチレータ)は放射線が入ったときに光を発生します。その光を電気信号に変換することにより放射線を検出する機器です。蛍光体の種類を変えることにより、α線、β線およびγ線の測定がそれぞれ可能となります。

核実験や原子炉で人工的に生成される放射性核種のことで、コバルト-60、ストロンチウム-90、セシウム-137、プルトニウムなどがあります。

ウランなどの核分裂によって生成する半減期28.8年の放射性同位体のことです。化学的性質がカルシウムによく似ているので、体内に取り込まれると骨に集まる傾向があります。環境に分布するストロンチウム-90は大気圏内核実験によるものですが、現在、その雨水・ちり中のストロンチウム-90濃度は1970年代に比べて約1/20に減少しています。

放射線のエネルギー分布または放射線パルスの波高分布をいいます。α線スペクトルやγ線スペクトルを測定することによってエネルギーから核種と放射能を求めることができます。スペクトルの測定とスペクトル解析の方法を総称してスペクトロメトリーといいます。

放射線のスペクトルを測定する装置で、シリコン半導体検出器を用いるα線スペクトロメータとゲルマニウム半導体検出器を用いるγ線スペクトロメータがよく使われます。

ウランなどの核分裂によって生成する半減期30年の放射性同位体のことです。化学的性質がカリウムによく似ているので、体内に取り込まれると筋肉に集まる傾向があります。環境に分布するセシウム-137は大気圏内核実験などによるものですが、現在、その雨水・ちり中のセシウム-137濃度は1970年代に比べて約1/20に減少しています。

放射線の量を表す単位で、次に示す3種類があります。
1)照射線量:空気中に生じた電荷で定義される線量です。単位として、C/kgやレントゲン(R)が使われます。
2)吸収線量:物質に吸収された放射線のエネルギーの量で定義されます。単位として、グレイ(Gy)を用います。
3)線量当量:人体に対する生物学的な影響を含めて定義されます。単位として、シーベルト(Sv)を用います。

線量あるいは線量率を測定する機器です。特定の場所に固定して測定する据え置き型、携帯型の線量測定器(サーベイメータ)、および長期間の線量を測定するフィルムバッジや熱ルミネセンス線量計(TLD)など多くの種類があります。前二者の検出器としては、電離箱やNaI(Tl)シンチレーション検出器などが使われます。

身体の組織や臓器により異なる放射線の影響度(放射線感受性)の指標となる係数を組織荷重係数といいます。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

組織荷重係数
組織荷重係数

タ行

核実験のうち大気圏内で行われるもので、地下核実験と比較すると、放射能が世界的規模で拡散し降水などとともに降ってきます。1980年10月の中国第26回核実験後は大気圏内核実験は行われていません。

粉じんやミストなどの気中に浮遊している粒子状の物質です。この試料の放射能を測定することにより、呼吸によって空気から人体へ取り込む放射能を推定することができます。

炭素-14(C-14)は、半減期5730年でβ線を放出して壊変します。環境中に存在する炭素-14は、宇宙線によって生成した中性子と大気中の窒素原子核との核反応によって作られます。大気中では生成量と減衰量が釣り合った状態になっているため、安定炭素(C-12)との比(14C/12C)がほぼ一定に保たれており、動植物はこの比率で炭素を取り込みます。死後、炭素-14は半減期5730年で減衰するのでその比から年代を決定することができます。これが放射性炭素年代測定法です。

陽子とほぼ同じ質量を持ち、電荷を持たない中性の素粒子です。核分裂や原子核反応によって発生する中性子は高速の中性子ですが、水など水素を多く含む物質(減速材)を通過すると減速されてエネルギーを失い、最終的にはエネルギーがほとんど0に近い熱中性子になります。

安定な原子核を原子炉に入れて中性子を照射すると、中性子捕獲反応という原子核反応によって質量数が一つ大きい原子核が作られます。その原子核が放射性核種の場合は、放射化された試料の放射能をγ線スペクトロメトリーによって測定し、もとの安定原子核の種類(元素)と量が分かります。ppb(10億分の1)レベルの微量元素を定量することができます。

1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国で発生した原子力事故で、発電所の原子炉が爆発・炎上したために、大量の放射能が世界的規模で拡散しました。

バックグラウンド計数率を低くするために、特別な装置や方法を用いた液体シンチレーションカウンタです。環境中の極めて微量なトリチウム(H-3)や炭素-14(C-14)などの測定に用いられています。

低バックグラウンド液体シンチレーション測定装置
低バックグラウンド
液体シンチレーション測定装置

β線を出す放射性同位体を測定する装置のことです。一般的な環境試料の放射能濃度は大変低いので、鉛などの厚い遮へい体によって外部からの放射線の影響を減らす仕組みが用いられています。

低バックグラウンドβ線測定装置
低バックグラウンド
β線測定装置

溶液中の一方に白金線などの電極を、他方に銅板などの電極をセットし、その間に直流の電圧を加え、溶液中の金属イオンをこの銅板などに付着させるものです。電気メッキのようなものです。

地球上に元から存在する放射性核種(カリウム-40、ウラン系列核種、トリウム系列核種など)および宇宙線と大気中の原子との衝突によって生ずる核種(トリチウム、炭素-14)などがあります。

放射線の電離作用によって気体中で作られるイオン対(電子と陽イオン)を測定するタイプの放射線検出器です。気体の放射性核種(クリプトン-85など)の測定や線量の測定に使われています。

「電離放射線」とは、物質に電離作用を及ぼす放射線のことをいい、これを単に「放射線」と表しています。
電離放射線には、荷電粒子(アルファ線や電子線など)のように、原子・分子を直接電離することができる直接電離(性)放射線と、エックス線や中性子線のように、原子の束縛電子や原子核と相互作用して荷電粒子線を発生させ、二次的に発生した荷電粒子線が物質に電離作用を及ぼす間接電離(性)放射線があります。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

放射線が人体を通過する時の人体へ及ぼす影響は、放射線が人体に与えるエネルギーの量だけでなく、放射線の種類に基づく違いも考慮する必要があります。人体へのエネルギーの与え方は放射線の種類によって異なります。
人体への影響の度合いは、人体へ与えられるエネルギー量(吸収線量)に、放射線の種類に基づく違いを考慮した係数(放射線荷重係数といいます)をかけると求めることができます。

計算式は、以下のとおりです。
等価線量=吸収線量×放射線荷重係数
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

等価線量

土壌試料の放射能を測定することにより、土壌中に蓄積した放射性核種の量を調べます。ストロンチウム-90やセシウム-137は雨水などにより土壌中を表層から下層にゆっくりと移動し、その状況を知るために両層の放射能を別々に測定します。

天然に存在する放射性核種で、トリウム-232(半減期140億年)が代表的なものです。トリウム-232から始まって次々と生成するいろいろな核種(ラジウム-224やラドン-220など)をトリウム系列の核種といいます。

水素の同位体で三重水素ともいわれ、3HまたはTと記されます。半減期が12.3年で、低エネルギーのβ線を放出する放射性核種です。天然中では、宇宙線と大気中の原子との核反応によって作られます。

ナ行

TLDあるいは熱蛍光線量計ともいわれます。ある物質は放射線に照射されると結晶中に蛍光のもとになる原子の状態が作られます。これに熱を加えると微弱な光が放出されるので、その光を検出して放射線の線量を測定することができます。放射線作業者の被ばく線量計として、また環境における空間放射線量計として使われています。

熱ルミネセンス線量計
熱ルミネセンス線量計

ハ行

発煙硝酸は二酸化窒素を含む濃硝酸の溶液です。発煙硝酸に対する硝酸ストロンチウムの溶解度は非常に小さく、これを利用して同族元素のカルシウムやその他多くの元素を化学分離することができます。

放射線測定器に試料を置かず、あるいは放射能を含まないブランク試料を置いて得られる計数値またはスペクトルをバックグラウンドといいます。

ある時刻における放射能に対して、放射能が1/2になる時間を半減期といいます。半減期は核種によって定まっており、短いもので1秒よりはるかに短く、長いもので数10億年以上にもなります。

人体が放射線にさらされることを被ばくといい、被ばくした放射線の量を被ばく線量といいます。
通常の放射線被ばく管理では、人体の吸収線量を表すグレイ(Gy)に放射線の種類ごとに定められた放射線荷重係数を乗じて算出した等価線量や等価線量に組織や臓器の放射線感受性を考慮した組織荷重係数を乗じて積算した実効線量が用いられ、いずれも単位はシーベルト(Sv)で表します。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

標準物質(reference material)とは、JIS Z 8103:2000によると、「測定装置の校正、測定方法の評価、または材料に値を付与することに用いるために一つ以上の特性値が十分に均一で、適切に確定されている材料または物質。備考:標準試料(standard sample)という場合もある。」と定義されています。

大気圏内核実験などによって生成された人工の放射性物質が大気中に拡散し、ちりなどと共に地上に降下する放射性降下物をいいます。代表的なものとしては、ストロンチウム-90とセシウム-137です。長い期間大気圏内核実験が行われていない現在では、自然放射能に比べるとその量は極めて少なくなりました。

不確かさ(uncertainty)とは、JIS TS Z 0032:2012によると、「用いる情報に基づいて、測定対象量に帰属する量の値のばらつきを特徴付ける負ではないパラメータ」のことをいいます。

プルトニウムとして代表的なプルトニウム-239は、ウラン-238が原子炉の中で中性子を吸収して作られる人工放射性核種です。プルトニウム-239は半減期が24000年でα線を放出します。また中性子を吸収して核分裂を起こします。環境放射能のモニタリングにおいても大変重要な核種です。プルトニウムは分離精製した後、α線スペクトロメータなどで測定されます。

国際単位系の放射能の単位で、原子核が1秒間に平均1個壊変する量として定義されます。ウランの放射能の発見によって1903年にノーベル物理学賞を受けたフランスの物理学者ベクレル(A.H.Becquerel)の名前に由来します。

原子核から放出される高速の電子をβ線といい、負の電荷をもつβ線と正の電荷をもつβ線(陽電子、ポジトロンともいう)があります。β線のエネルギーは、ゼロから最大エネルギーまで連続した分布であり、β線のエネルギーは最大エネルギーで表されます。

Comprehensive Nuclear Test Ban Treatyの略。
大気圏内、宇宙空間を含む大気圏外、水中および地下のあらゆる場所における核兵器実験を禁止する条約で、1996年9月に国連総会で採択されました。1963年に作成された部分的核実験禁止条約(PTBT)では地下での核実験を禁止していなかったので、CTBTは画期的なものでした。この条約が発効するためには、5核兵器所有国およびインド、パキスタン、イスラエルなど指定された44か国の批准が必要であるため、条約はまだ発効していません。1999年10月に第1回発効促進会議、2001年11月に第2回会議が開かれました。条約はその効果的な実施のための包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)の設置を予定し、国際監視システムなどを規定しています。英国、フランス、ロシアはすでに批准しているが、米国上院は1999年10月に批准を拒否しました。ブッシュ政権は2001年11月の第2回会議を欠席、CTBTの死文化を狙っていると批判されました。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

試料中の放射性核種を分離精製した後、その放射能を測定して放射性核種の量を測る分析法のことです。

原子核が放射線を放出して他の種類の原子核に変化することで、崩壊ともいわれます。α線を放出する壊変をα壊変、β線を放出する壊変をβ壊変、軌道電子を捕獲する壊変を軌道電子捕獲壊変といいます。一般的に、原子核がγ線を放出しても原子核の種類は変わりませんので壊変とはいいません。

放射線を放出する核種をいいます。

放射性核種とほぼ同じ意味で、ラジオアイソトープともいいます。

X線やγ線のような電磁波の放射線とα線やβ線のような粒子の放射線がありますが、いずれも物質中で直接あるいは間接的に原子を電離する能力を持つものをいいます。

身体が受ける吸収線量が同じ場合でも、放射線の持つ性質の違いにより身体への影響は異なります。放射線の違いによる身体への影響について、同じ尺度で評価するために設定された係数を放射線荷重係数といいます。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

放射線荷重係数

身体の組織や臓器によって、放射線が体に及ぼす影響度は異なります。この影響度の違いのことを放射線感受性といいます。放射線による人体への影響には、DNAの損傷によって起こるがんや遺伝的影響があります。DNAは、細胞分裂の時に設計図として使用されるため、細胞分裂や増殖が盛んな組織や未分化な細胞(造血組織、生殖腺、皮膚など)ほど影響を受けやすく、放射線に対する感受性が大きいといえます。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

放射線感受性

放射線ホルミシスとは、高線量では有害な放射線が低線量では生物活性を刺激したり、あるいは以降の高線量照射に対しての抵抗性をもたらす適応応答を誘導する現象をいいます。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

放射能という言葉は、次の2通りの意味で使われます。
1)原子核が放射線を放出して別の原子核になる性質、
2)放射性壊変の強度で、1秒間に壊変する原子核の数。
放射能の単位はベクレル(Bq)です。1秒間に原子核が平均1個壊変する時、放射能は1ベクレルです。

放射性核種(親)と当該核種が壊変してできた核種(娘)との放射能量の関係が、時間とともにある割合で変化する状態をいい、永続平衡や過渡平衡といわれるものがあります。

ある物質が高濃度、あるいは大量に用いられた場合には有害であるのに、低濃度あるいは微量に用いられれば逆に有益な作用をもたらす現象を表す言葉です。
(参考:一般社団法人ホルミシス臨床研究会HP)

マ行

生活費の理論的な算定方法の一つであり、食料や医療など生活に必要な品目ごとに標準量を求め、それに価格を乗じて合算して生活内容を示す方法をいいます。最低生活費の算出、労働者の賃金要求の基礎資料などに用いられます。
(参考:weblio辞書(三省堂 大辞林))

放射平衡が成立している場合に、長い半減期をもつ親核種から短寿命の娘核種を繰り返し分離・抽出する操作のことをいいます。乳牛から時間を経てミルクを搾り取るのと同様な操作であるところから、ミルキングといわれています。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

原子力施設内や環境における放射線の線量、あるいは放射性物質の濃度を測定・監視することを放射線モニタリングといいます。環境放射線モニタリングには、環境における放射線(主として、空間γ線量)のモニタリングと環境試料の放射能モニタリングがあります。

屋外の空間放射線レベルを測定・監視するため、NaI(Tl)シンチレーション検出器などの空間放射線測定器を設置した野外の放射線測定地点のことです。測定器は建屋屋上などに設置され、そこからの測定データは常に集中監視装置に送られて監視されます。

全体
全体

センサ部
センサ部

ヤ行

野菜のうち根を食用とするものですが、植物学的な根だけでなく、ジャガイモ(茎の変形体)やタマネギ(葉の変形体)などのように土の中で育つものが含まれます。

野菜のうち葉を食用とするものです。

ウラン-235の核分裂によって作られます。半減期は8日で、β線およびγ線を放出する人工放射性核種です。ヨウ素は揮発性が高いため、核実験や原子炉事故などで環境に最も多く放出されるので環境放射線モニタリングにおいて重要な核種の一つです。

金属イオンが水溶液から有機溶媒へ抽出されることを利用した化学分離法です。水(水溶液)と油(有機溶媒)が混ざらないことを利用しています。

溶媒抽出法
溶媒抽出法

体内に摂取された放射性物質は、その半減期にしたがい放射能が減衰するとともに、代謝機能により体内から徐々に排泄されます。この間に放出される放射線により組織や臓器が被ばくします。
預託線量とは、一般成人に対して摂取後の50年間(子供や乳幼児に対しては摂取時から70歳まで)に受ける量を摂取時に受けたと想定した放射線量のことをいいます。
(参考:原子力百科事典 ATOMICA)

預託線量

ラ行

ラジウム-226はキュリー夫人が発見しました。ウランなどと同じように、土壌などに含まれている天然の放射性核種です。その半減期は1600年で、α線を放出してラドン-222になります。

放射性同位体と同じです。

地中などに含まれているラジウム-226が壊変して生まれる気体の放射性核種です。その半減期は3.82日と短いのですが、地中にラジウム-226がある限り必ず生成して空気中に拡散していきます。呼吸によって体内被ばく(全被ばく線量のほぼ半分)をもたらすので環境放射能として重要な核種です。

ラミセス(RAMISES:RAdiation Monitoring Information Sharing for Emergency Support) は、緊急時モニタリング業務の円滑な実施に資することを目的として、地方公共団体、国等の防災関係者間におけるモニタリング情報、事故情報等の迅速かつ的確な収集と共有を支援するネットワークシステムです。
(参考:公益財団法人原子力安全技術センターHP)