身の回りの放射線

私たちの身の回りには、地球が誕生してからずっと自然界に存在している放射線や医療などに利用される人工の放射線などさまざまなものがあります。
ここでは、このような身の回りの放射線についてわかりやすく説明しています。

私たちの身の回りには自然界からの放射線が存在しています。目には見えませんが、私たちの体は自然界から常に放射線を受けています。その量は、日本では年間約2.1mSv(平均値)です。
日本の国内でも住む場所によって年間約0.2mSv前後違います。また、外国では年間10mSvとなるところもあります。世界の平均値は年間2.4mSvです。
その他に、日本人は医療で年間約3.87mSv(平均値)を受けています。

身の回りの放射線ってどんなものがあるの?

人間の活動によりつくり出されたものをいいます。人工放射線としては、1945年から1980年の間に米国や旧ソ連、中国などが行った大気圏核爆発実験によるフォールアウトがあります。
また、原子力施設からわずかながら放射線が放出されています。いずれも自然の放射線と比べてごく微量です。
その他、医療の分野において、エックス線診断などの医療に用いられる放射線があります。種類により異なりますが、人が1回当たり受ける線量は、胸部の集団エックス線検診の場合、0.06mSv程度、胃の集団エックス線検診の場合、0.6mSv程度といわれています。

放射線が物質に当たるとどうなるの?

この図は、日本各地の雨水・ちり(降下物)Rain and Dry Fallout中に含まれる放射性降下物のひとつであるストロンチウム90が1km2当たり1ヶ月間に降下した量の変化を表しています。1980年に大気圏核爆発実験が禁止されたため、ストロンチウム90の月間降下量は減少しました。
しかし、1986年にチェルノブイリ原子力発電所事故の影響により一時的に増加しました。その後、ストロンチウム90の月間降下量は1970年代の1/20程度のレベルで推移していましたが、2011年3月以降、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響による、ストロンチウム90濃度の増加が観測されました。

自然のウランは地球誕生以来、私たちの身の回りの海水や土砂の中に自然に存在しています。普段の生活の中で私たちが受ける自然放射線の約7割が自然のウラン、トリウムやその娘核種からのものです。

トリウム

原子番号90の放射性物質です。地殻中に広く分布し、モナズ石、ホウトリウム石やトール石などに含まれています。

自然のウランとは

自然に存在する92種類の元素の中で最も重い原子番号92の放射性物質です。微量ですが普通の土砂や海水にも含まれています。自然のウラン中のウラン235の割合は0.7%で、残りの99%以上はウラン238です。

放射線量の地域差ってあるの?

この図は、各都道府県が毎月1回空間放射線量率を測定した結果の年間平均値を示したものです。空間放射線は主に宇宙と大地からの自然放射線によるものです。
ウランやトリウムなどの放射性物質が多く含まれる花崗岩が西日本に広く分布していることから、西日本は東日本に比べ、少し高い空間放射線量率を示しています。

原料、鉱石の例

リン鉱石、モナザイト、チタン鉱石、天然ガス、スズなどの金属鉱、石炭、セメントなどに自然放射性物質が含まれています。

原料、鉱石の例

一般に利用されている製品の例

時計の文字盤、蛍光灯のグロースターター、レンズなどの静電防止、煙感知器、一部のセラミック、ガラス製品などに自然放射性物質が含まれています。

一般に利用されている製品の例

ラドンは、自然に存在するウランの娘核種のラジウムから発生する気体の放射性物質で、呼吸により人体に取り込まれます。 ラジウムの放射性壊変によりラドンが生成され、地面や建材などから空気中に拡散します。
ラドンは密閉した屋内などにたまることがありますが、窓を開けるなど換気を行うことで容易に屋外に排出されます。

ラドンって?

日本のラドンの年間実効線量は、世界平均の3分の1程度です。これは、地質の違いや比較的換気率の高い木造建築の家屋を調査の対象としていることが考えられています。
しかし、最近では、日本においても密閉性の高いコンクリートの住宅等が増えていますので、ラドン濃度が高くなる可能性があります。

世界と日本のラドン濃度は違うの?

全国屋内ラドン濃度の頻度分布

この図は、1993年4月から1996年6月の約3年間にわたり、47都道府県のそれぞれ20家屋を対象に屋内のラドン濃度を日本分析センターJapan Chemical Analysis Center(JCAC)が調査した結果です。 屋内ラドン濃度は家の換気や建材によって変化します。

長期的に高い濃度のラドンを吸入すると、その壊変生成物が気管支や肺に沈着し、肺がんを誘発するなど、人体に影響をおよぼすことが考えられます。
ICRPは、放射線防護の基礎的な考え方や対策基準を示しています。屋内ラドン濃度の対策基準(何らかの措置を施す必要のあるラドン濃度レベル)として、
200Bq/m3~600Bq/m3の範囲を勧告しており、各国において必要に応じ導入されています。

健康への影響と国際放射線防護委員会(ICRP)勧告について

環境における中性子レベルを把握するため、平成12年度から17年度にかけて、全国における中性子線量率測定調査を実施しました。
また、環境の中性子は宇宙線起源のものであり、太陽活動の影響を受けて変動するため、日本分析センターJapan Chemical Analysis Center(JCAC)内において、設置型レムカウンタによる中性子線量率及び中性子スペクトロメータによる中性子スペクトルの連続測定を実施しました。

全国の中性子線量率測定結果

レムカウンタ、測定結果(全国平均値4.0nSv/h)

中性子計数率の変動の例

設置型レムカウンタ、中性子スペクトロメータ、変動の例